マリコラム 西日本放送アナウンサー「鴨居 真理子」のブログ
2021/08/01
ふるさと文庫「菊池寛を読む」
鴨居 真理子
西日本放送ラジオでは、今年1月から「ふるさと文庫 菊池寛を読む」を
アナウンサーの朗読で毎週日曜日の朝7時35分から放送しています。
大正時代から昭和の初期にかけて発表された短編小説です。
私は大正十年の作品、「俊寛」を担当しました。
今の時代に読んでも全く古さを感じられない作品です。
歌舞伎や戯曲では「悲劇」の作品として知られています。
都で高貴な存在だった俊寛は、平家滅亡を陰謀した罪で康頼、成経とともに鬼界ヶ島に流刑されます。
赦免された二人が去り、俊寛は、孤独と絶望の中、狂死するというストーリー。
ところが、菊池寛は、悲劇にはしなかったのです。
島に一人に残された俊寛は、自然と格闘し、家を作り、畑を開墾し、魚を獲り、たくましく生きるのです。
都で地位や権力に狂奔していた自分の浅ましさに気づき、島の土人の娘と家族を作り、幸せに暮らしたというストーリーにしました。
朗読では、「人間の生きる力の美しさや逞しさ」を表現したいと取り組みました。
人間は、自分の考え方ひとつで、生まれ変わることができるのだという 「希望」を伝えたいと思って朗読しました。
本当の幸せとは、何か?
菊池寛の作品は、どの作品にも人間の本質を描かれていて、
みずみずしい感性に触れることができます。
コロナ禍の今だからこそ、生きるヒントを得られる作品だと感じています。
今こそ、読んでほしい作品。今を生きる私たちに時代を超えたメッセージに溢れています。
この番組を通してよい作品に出会えたことに感謝です。
朗読収録中に菊池寛顕彰会の福井明子さんが取材に来られました。
その様子を菊池寛顕彰会開放第17号に紹介して下さっています。
また、制作ディレクター兼朗読を担当している熊谷富由美アナウンサーや「藤十郎の恋」を朗読した池田弥生アナウンサー、「三浦右衛門の最後」を朗読した中桐康介アナウンサーの朗読に込めた思いも紹介されています。
会報誌も是非、ご覧いただけたら幸いです。
因みに、西日本放送ラジオのホームページから
「ふるさと文庫 菊池寛」と「ラジオで聞く香川菊池寛賞」(香川菊池寛賞受賞作品)を西日本放送のアナウンサーたちの朗読をいつでも聴くことができます。
ぜひ、こちらもお聞きくださいませ。