第20回香川菊池寛賞
帰来広三「傷痕」
Y新聞大阪本社社会部〝戦争班〟の記者、福森は突然たずねて来た、澤田元海軍飛行兵に上官探しをたのまれた。福森はあらゆる方法を用いて探そうとした。上官は予備学生出身の中山善右衛門中尉で、卒業学校が京都のD大とわかり、学校から下宿を見つける。そして、彼が、満州生まれとわかるが、本籍は樺太でそれ以後は不明だったが、同宿の友人大西の所をさぐり当て、福森は徳島県の三並村へ飛ぶ。
大西は郵便局長を長く勤めた人で、中山の親友であった。が、中山中尉はすでに死亡していたが、大西の口から戦後の彼の生活を聞く。戦傷で片腕となった中山は、大西の下で郵便配達人となり、60才でなくなるまで30年間勤めた、という。結婚もして男の子を一人育てたと聞く。福森はもう一人、福岡の元軍医の所へ行って中山の手術のことを聞いたが、彼は精管を切断して子どもをつくることはできないことを知る。中山の子はすでに成人しこともあろうにY新聞にいたが、福森はすべて自分の胸に中山中尉の秘密を納め、元軍人の戦後の生きざまに感動するのだった。
著者プロフィール
帰来広三(きらい こうぞう)
香川県高松市生まれ。
俳誌「かつらぎ」同人、山陽新聞香川俳壇選者、句会指導。
日本音楽著作権協会会員
第20回香川菊池寛賞受賞
「随筆へんろ宿賞」受賞
放送内容
朗読:采野 友啓
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最終回
2015年11月9日放送
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第10回
2015年11月2日放送
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第9回
2015年10月26日放送
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第8回
2015年10月19日放送
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第7回
2015年10月12日放送
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第6回
2015年10月5日放送
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第5回
2015年9月28日放送
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第4回
2015年9月21日放送
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第3回
2015年9月14日放送
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第2回
2015年9月7日放送
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第1回
2015年8月31日放送