第52回香川菊池寛賞奨励賞

香川菊池寛賞とは

香川出身の文豪・菊池寛の業績を顕彰するとともに郷土の文芸創作活動を奨励するために設立されました。

竹下諄「落書き」

　高校三年生の賢人は、志望大学が同じクラスメイトの涼介と一緒に受験勉強をしている。二人はお互いをライバルと認め合う仲だが、賢人は自分と正反対な涼介のことを密かに羨ましく思っていた。
　段々と受験が迫る中、賢人は自らの将来に対する漠然とした不安やそれに付随したクラスメイトへの不満を抱きながらも、少しでも合格に近づくように勉強を続ける。しかし、入試まで一ヵ月を切った頃、予備校で受けた模擬試験をきっかけに賢人の心は大きく乱れてしまう。
　日々の勉強、模擬試験、面談など、受験生としては当たり前かつ単調に見える毎日。それでも、当事者である賢人の内側には考えなければならないことばかりで、大人になりきれない心はときどき揺れる。そんな受験生活を通して、賢人は明確な何かを探しながら、卒業と共に一つの答えを見つける。