第45回香川菊池寛賞

香川菊池寛賞とは

香川出身の文豪・菊池寛の業績を顕彰するとともに郷土の文芸創作活動を奨励するために設立されました。

遠藤まこ「まどろみ」

　徳島駅から高松行の最終便に乗った里子は眠っているところを、宮川と名乗る見知らぬ男に起こされる。彼に水商売の女性と勘違いされ、すっかり気分を害していたはずの里子だが、退屈まぎれに話を合わせてもいいか、という茶目っ気がわく。
　それから何日かして偶然にも叔母に喫茶店を手伝って欲しいと懇願され、勤め始める。そんなある日、宮川がひょっこり店に現れる。彼と里子はだんだん親しくなり、神戸の病院に入院中の宮川の妻を見舞うため、フェリーで神戸へ向かう。途中で宮川に二人で遠くへ行けたら、と告白され、里子の心は一瞬揺らぐが、真面目な夫や宮川の妻を裏切ることはできない。
　三ノ宮で宮川と別れた里子は深夜の高松駅へ降り立つ。宮川とのことは全て夢だったような気がしながら、里子はハイヒールの音を響かせ、現実へと戻って行く。