第39回香川菊池寛賞
森岡啓子「橋」
 瀬戸大橋が開通したときのこと。峰子は夫に連れて行ってもらいたいのに、連れて行って欲しいと言えなかった。娘といっしょにやっと連れて行ってくれることになった。久しぶりで夫と心を通わせられたと思ったとき、躓いて転んだ。その拍子に抱きついた夫は冷たい目をして峰子を見た。何十年も前、単身赴任をしていたときにも見た目だった。峰子は深く傷ついた。
         三年後、夫の繁夫は娘の離婚騒動が引き金となって、単身赴任をしていたころ愛した佳子のことを思い出す。繁夫は折にふれ、蓬莱橋に立って母や佳子を偲んでいた。佳子との間に生まれた繁行と、瀬戸大橋が開通したら連れて行くと約束していた。繁夫はそれを果たすことができた。蓬莱橋の上で娘と語り合い、大人になった娘を見て、親としての役目を果たせたようで繁夫はうれしかった。佳子の七回忌の案内を娘が見て、峰子に内緒で法事に出かけられるようにしてくれた。
著者プロフィール
森岡啓子(もりおか けいこ)
昭和22年生れ(香川県坂出市出身)
           神奈川県在住
           香川大学農学部卒
           平成3年 第21回神奈川新聞文芸コンクール準入選
           平成16年 第39回香川菊池寛賞受賞
           平成19年 第20回銀の雫文芸賞受賞
 
       放送内容
一部「瀬戸大橋」 朗読:伊達典子(RNCアナウンサー)
       二部「蓬莱橋」 朗読:熊谷富由美
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           最終回 2017年5月22日放送 
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           第9回 2017年5月15日放送 
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           第8回 2017年5月8日放送 
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           第7回 2017年5月1日放送 
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           第6回 2017年4月24日放送 
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           第5回 2017年4月17日放送 
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           第4回 2017年4月10日放送 
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           第3回 2017年4月3日放送 
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           第2回 2017年3月27日放送 
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           第1回 2017年3月20日放送 
